Cellular Aging Journal 02
Skin
Impact.
老化細胞が肌へ与える
4つの影響とは?
前編「老化細胞とは?分裂を止めても体内に残る細胞の正体」では、老化細胞の基本的な仕組みを解説しました。今回は、その老化細胞が肌に残ることで、どのような変化につながる可能性があるのかを美容初心者向けに紹介します。
News Topics
この記事で分かること
老化細胞が肌内部へ与える代表的な4つの影響を解説します。SASPによる慢性炎症、線維芽細胞と真皮成分、結合型セラミドと乾燥、ミトコンドリア機能低下と酸化ストレスを、難しい言葉をかみ砕きながら紹介します。
Four Effects
on Skin.
老化細胞は、表皮と真皮の両方へ影響する可能性があります。
老化細胞は、分裂を止めて体内に残っているだけの細胞ではありません。
周囲へ炎症に関わる物質を出したり、肌のうるおいを守る構造や、ハリを支える真皮の環境へ影響したりすることが報告されています。
さらに、細胞内でエネルギーを作るミトコンドリアの働きが低下すると、活性酸素種が増え、酸化ストレスへつながる可能性があります。
影響1SASPによる慢性炎症
Effect 01
SASP and
Inflammation.
老化細胞が出す物質によって、肌内部で炎症が続く。
老化細胞の特徴の一つが、周囲へさまざまな物質を出すことです。
この現象は、SASP(老化関連分泌現象)と呼ばれます。
SASPには、炎症に関わる物質や、肌の構造を分解する酵素などが含まれます。
そのため、肌表面に赤みや腫れが目立っていなくても、肌内部では弱い炎症が長く続くことがあります。これを慢性炎症と呼びます。
SASPを簡単にいうと?
一つの老いた細胞が、まわりの元気な細胞まで次々と老化させてしまう「肌内部のドミノ倒し」のような現象です。
この影響で肌はどうなる?
慢性的な炎症が続くと、肌の赤みが目立ちやすくなるほか、シミやシワなどの肌変化につながる場合があります。

03
影響2線維芽細胞と真皮構造
Effect 02
Dermal
Fibroblasts.
線維芽細胞が老化すると、真皮の構造を保ちにくくなる。
肌のハリや弾力を支えているのが、表皮の下にある真皮です。その真皮で、コラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸などを作っているのが線維芽細胞です。
線維芽細胞は、真皮を支える材料を作る「職人」のような細胞です。
コラーゲンは真皮の骨組み、エラスチンはしなやかさ、ヒアルロン酸は水分を抱える働きに関わります。
線維芽細胞は材料を作るだけでなく、古くなった真皮成分を分解する酵素も出しています。
健康な状態では「作る働き」と「分解する働き」のバランスが保たれています。
線維芽細胞を簡単にいうと?
真皮の材料を作り、古くなった部分を整える「肌内部のメンテナンス担当」です。

線維芽細胞の中にも、不要なものを片づける仕組みがあります。
線維芽細胞が元気に働くためには、細胞内にたまった不要な物質や傷ついた部品を処理することが必要です。この役割を担うのが、次に説明する「オートファジー」です。
Cellular
Cleaning.
細胞内の掃除機能「オートファジー」とは?
細胞の中には、傷ついた部品や不要になった物質を分解し、再利用する仕組みがあります。
この細胞内の掃除・リサイクルシステムを、オートファジーと呼びます。
オートファジー機能が低下することで、I型プロコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸が減り、コラーゲンを分解する酵素が増えることが確認されています。
01
オートファジー機能が変化
細胞内の不要な物質を最後まで分解しにくくなります。
02
作る働きが低下
コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸を作る働きが低下します。
03
分解酵素が増加
コラーゲンなどを分解する酵素が増えやすくなります。
04
真皮を保ちにくくなる
ハリや弾力を支える構造のバランスが崩れやすくなります。
線維芽細胞の老化によってオートファジー機能が低下すると、コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸の産生が低下するだけでなく、それらを分解する酵素も過剰に作られやすくなります。
この影響で肌はどうなる?
真皮の構造を保ちにくくなることで、肌のハリや弾力が低下し、たるみやシワが目立ちやすくなる可能性があります。
影響3結合型セラミドと乾燥
Effect 03 / Bound Ceramide
結合型セラミドが減ると、肌の水分が逃げやすくなる。
肌の一番外側にある角質層には、肌内部の水分を守るバリア機能があります。
そのバリアを支える成分の一つが、結合型セラミドです。
結合型セラミドは、角質細胞の表面と細胞間脂質をつなぎ、角質層全体を安定させる役割を担っています。
老化した表皮を用いた研究では、老化細胞が増えるほど結合型セラミドが減り、水分が蒸散しやすくなることが報告されています。
肌を家に例えると?
角質細胞が「レンガ」、細胞間脂質が「レンガの隙間を埋めるモルタル」、結合型セラミドが「レンガの表面を支える防水シート」のような存在です。
この影響で肌はどうなる?
角質層から水分が逃げやすくなり、乾燥、つっぱり、カサつきが起こりやすくなります。外部刺激の影響も受けやすくなる可能性があります。
影響4ミトコンドリアと酸化ストレス
Effect 04
Mitochondria
and ROS.
ミトコンドリアの働きが低下すると、酸化ストレスが起こりやすくなる。
ミトコンドリアは、細胞が活動するためのエネルギーを作る器官です。
スマートフォンを動かすバッテリーのような存在であることから、「細胞内の発電所」とも呼ばれます。
ミトコンドリアの働きが低下すると、エネルギーを作る効率が落ちるだけでなく、活性酸素種(ROS)が増えやすくなります。
活性酸素種は本来、免疫や細胞同士の情報伝達にも必要です。しかし、必要以上に増えると、DNA、脂質、タンパク質などへ負担を与えます。
活性酸素種の産生と、それを抑える抗酸化機構のバランスが崩れた状態を酸化ストレスと呼びます。

01
ミトコンドリア機能低下
細胞内でエネルギーを作る効率が低下します。
02
活性酸素種が増加
活性酸素種の産生量が増えやすくなります。
03
バランスが崩れる
活性酸素種と抗酸化機構の釣り合いが崩れます。
04
酸化ストレス
DNA、脂質、タンパク質などへ負担がかかります。
この影響で肌はどうなる?
酸化ストレスが続くと、肌のくすみ感や色ムラ、ハリの低下などにつながる可能性があります。
Connected
Changes.
4つの影響は、別々ではなく互いにつながっています。
老化細胞が蓄積すると、SASPによる慢性炎症が続きやすくなります。
炎症や細胞機能の変化は、真皮の材料を作る線維芽細胞や、表皮のバリア構造へも影響する可能性があります。
さらに、ミトコンドリア機能が低下すると活性酸素種が増え、新たな細胞ダメージが生じやすくなります。
このように、慢性炎症、真皮構造の変化、乾燥、酸化ストレスは互いに影響し合う可能性があります。
老化細胞による4つの影響
影響1
SASPによる慢性炎症
炎症に関わる物質が周囲へ広がり、弱い炎症が続きやすくなります。
影響2
真皮構造の変化
コラーゲンなどを作る働きと分解する働きのバランスが崩れやすくなります。
影響3
バリア機能の低下
結合型セラミドが減り、角質層から水分が逃げやすくなります。
影響4
酸化ストレス
活性酸素種が増え、細胞を構成する脂質やタンパク質などへ負担がかかります。
これらの変化は別々に起こるのではなく、互いに影響し合う可能性があります。
老化細胞の影響を考えるときは、炎症、ハリを支える真皮、うるおいを守る表皮、細胞内の酸化ストレスを、一つにつながった肌環境の変化として捉えることが大切です。
Frequently
Asked Questions.
よくある質問
老化細胞が増えると、必ずシワや乾燥が起こりますか?
肌の変化には、紫外線、乾燥、生活習慣、加齢など複数の要因が関わります。老化細胞は、その一因となる可能性が研究されています。
線維芽細胞とは何ですか?
真皮でコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸などを作り、肌の構造を支えている細胞です。
活性酸素はすべて悪いものですか?
活性酸素種は免疫や細胞同士の情報伝達にも必要です。問題となるのは、必要以上に増えて抗酸化機構とのバランスが崩れた場合です。
化粧品で老化細胞を取り除けますか?
化粧品によって体内の老化細胞を除去できるとはいえません。本記事は、細胞老化と肌構造に関する研究情報を理解するためのものです。