炎症が引き起こす2つの悪循環 ― NMF減少とバリア機能低下の仕組み

Skin Science Journal 02

NMF
Loss.

炎症によってNMFが減少すると、
肌では何が起こる?

NMFが減少すると、水分を抱える力だけでなく、紫外線や外部刺激から肌を守る環境にも影響が及びます。

乾燥と外部刺激を感じる肌の状態を表すメインビジュアル

News Topics

この記事で分かること

PCAとウロカニン酸の違い、NMF減少による水分保持力・紫外線防御・肌表面pHへの影響、炎症によって未熟な角質層が形成される流れを解説します。

Less NMF,
More Dryness.

NMFが減ると、保湿力と防御機能の両方が低下します。

炎症が続く肌では、炎症性サイトカインの影響によってBH(ブレオマイシン水解酵素)の発現が低下し、天然保湿因子(NMF)が十分に作られにくくなることが報告されています。

NMFを構成する成分の中でも、乾燥肌との関わりが深いのがPCA(ピロリドンカルボン酸)とウロカニン酸です。どちらもフィラグリンから作られますが、それぞれ異なる役割を担っています。

PCAの減少は水分保持力の低下へ、ウロカニン酸の減少は紫外線防御力の低下や肌表面pHの上昇へつながり、乾燥と炎症の悪循環を進める一因になります。

01

Two Roles,
One Origin.

PCAとウロカニン酸、それぞれの役割

PCAとウロカニン酸は、どちらもフィラグリンから作られるNMF関連成分です。しかし、PCAは主に水分保持を、ウロカニン酸は紫外線防御と肌表面の弱酸性環境を支えます。

PCAとウロカニン酸の比較図
PCAとウロカニン酸の働きの違い

01

PCA

PCA(ピロリドンカルボン酸)

角質層の水分を抱え込み、うるおいを保つ

高い吸湿性によって角質細胞内へ水分を引き寄せ、水分保持を支えます。不足すると水分保持力が低下し、乾燥しやすくなります。

02

UROCANIC ACID

ウロカニン酸

紫外線から肌を守り、肌表面を弱酸性に保つ

肌環境を整え、外部刺激から肌を守る働きに関わります。不足すると紫外線防御力の低下や肌表面pHの上昇につながります。

PCAが角質細胞へ水分を引き寄せて保持する仕組み

PCA and Water Retention

PCAが減ると、
水分を抱え込めなくなる。

PCAはNMFを構成する主要成分の一つで、高い吸湿性を持っています。

スポンジが水を吸収するように、角質細胞の中へ水分を引き寄せて保持する役割があります。

PCAが減少すると、角質層は十分な水分を保持できなくなり、乾燥しやすい状態になります。

Urocanic Acid and Skin Defense

ウロカニン酸が減ると、肌を守る力も低下する。

ウロカニン酸は、紫外線の一部を吸収し、肌が本来持つ防御機能を支える役割に関わります。

もう一つの重要な役割が、肌表面を弱酸性に保つことです。すこやかな肌では、弱酸性環境によって皮膚の常在菌バランスが保たれています。

ウロカニン酸が減少すると、肌表面のpHが上昇しやすくなり、黄色ブドウ球菌が増殖しやすい環境へ傾く可能性があります。その結果、肌荒れや炎症が起こりやすくなると考えられています。

UROCANIC ACID FLOW

  1. ORIGIN

    フィラグリン

    角質細胞内にあるタンパク質

  2. BREAKDOWN

    分解される

    酵素の働きによってNMF関連成分へ変化

  3. UROCANIC ACID

    ウロカニン酸

    NMFを構成する成分の一つ

  4. TWO ROLES

    2つの役割

    紫外線の一部を吸収する
    肌表面を弱酸性に保つ

  5. WHEN IT DECREASES

    不足すると

    紫外線防御力の低下やpH上昇につながり、常在菌バランスが乱れやすくなる

フィラグリンからウロカニン酸が作られ、肌環境を支えるまでの流れ

From NMF Loss
to Inflammation.

NMFの減少が、乾燥と炎症をつなげる。

PCAが減ると保湿力が低下し、ウロカニン酸が減ると紫外線防御力と弱酸性環境を保つ力が低下します。

この2つの変化が重なることで、乾燥と外部刺激の影響を受けやすくなり、炎症を繰り返す乾燥スパイラルが進みやすくなります。

01

NMF減少

フィラグリン由来の保湿・防御関連成分が不足しやすくなります。

02

PCA減少

角質層が水分を抱え込みにくくなります。

03

ウロカニン酸減少

紫外線防御力の低下と肌表面pHの上昇につながります。

04

炎症が起こりやすい

乾燥と炎症が互いに影響し合う状態へ進みます。

05

Immature
Corneum.

炎症は、未熟な角質層も作り出す。

炎症の影響は、NMFの減少だけではありません。炎症性サイトカインが増加すると、ターンオーバーが必要以上に早まり、角質細胞が十分に成熟しないまま肌表面へ押し上げられることがあります。

本来であれば約4〜6週間かけて成熟する角質細胞が、十分に成熟しないまま肌表面へ移動すると、未熟な角質層が形成されます。

未熟な角質層では、角質細胞を支える構造や、細胞間脂質が整うための土台が十分に作られにくくなります。

正常なターンオーバーと炎症によって加速したターンオーバーの比較図

Build the
Barrier.

CEが整って初めて、細胞間脂質も並びやすくなる。

成熟した角質細胞の表面には、CE(Cornified Envelope:角化細胞膜)という丈夫な構造が形成されます。

CEは角質細胞を支える「外壁」のような役割を担い、その上にセラミド、コレステロール、遊離脂肪酸などの細胞間脂質が規則正しく並ぶことで、強固なバリア機能が作られます。

しかし未熟な角質層ではCEが十分に形成されないため、細胞間脂質も形成・整列しにくくなります。

角化細胞膜CEの上にセラミドなどの細胞間脂質が整列する構造図

01

炎症

炎症性サイトカインが増加します。

02

ターンオーバー加速

角質細胞が十分に成熟しにくくなります。

03

CE形成不足

細胞間脂質が形成・整列する土台が不足します。

04

バリア機能低下

水分蒸散と外部刺激の侵入が起こりやすくなります。

Two Cycles,
One Dryness.

乾燥肌では、2つの悪循環が同時に進みます。

一つは、炎症によってBHの発現が低下し、NMFが十分に作られなくなることで、PCAやウロカニン酸が減少し、肌本来の保湿力や防御機能が低下する流れです。

もう一つは、炎症によってターンオーバーが乱れ、未熟な角質層が形成されることで、CEが十分に形成されず、セラミドなどの細胞間脂質も形成・整列しにくくなり、バリア機能が低下する流れです。

このように乾燥肌は「水分不足」だけではなく、NMF、細胞間脂質、炎症が互いに影響し合いながら進行します。

POINT

炎症は、必ずしも赤みやかゆみとして肌表面に現れるとは限りません。
肌表面に目立った変化が見られなくても、肌内部では炎症が起こっている場合があります。 このような目に見えにくい炎症も、NMFの産生や角質層の成熟に影響し、乾燥しやすい肌状態につながることがあります。

VICIOUS CYCLE 01

NMF低下の悪循環

  1. 01 炎症によってBHの発現が低下する

    BH(ブレオマイシン水解酵素)は、フィラグリンを分解して天然保湿因子(NMF)を作る酵素です。

  2. 02 NMF・PCA・ウロカニン酸が減少する

    NMFは肌のうるおいを保ち、PCAは高い水分保持力を持ち、ウロカニン酸は紫外線防御や弱酸性環境の維持に関わります。

  3. 03 保湿力と肌を守る力が低下する

    PCAの減少で水分を抱え込みにくくなり、ウロカニン酸の減少で紫外線防御力や弱酸性環境を保つ力が低下します。

  4. 04 乾燥が進み、さらに炎症が起こりやすくなる

    水分不足や肌表面pHの上昇によって外部刺激の影響を受けやすくなり、再び炎症が起こることでSTEP01へ戻ります。

炎症へ戻り、NMF低下の悪循環が続く

VICIOUS CYCLE 02

バリア機能低下の悪循環

  1. 01 炎症によってターンオーバーが加速する

    肌細胞の生まれ変わりが早まり、角質細胞が十分に成熟しないまま肌表面へ押し上げられます。

  2. 02 未熟な角質層とCE形成不足が生じる

    CE(角化細胞膜)は、セラミドなどの細胞間脂質が並ぶための土台となる構造です。

  3. 03 細胞間脂質が形成・整列しにくくなる

    セラミド・コレステロール・遊離脂肪酸などが規則正しく並びにくくなり、角質層のバリア構造が乱れます。

  4. 04 水分蒸散と刺激侵入が増え、炎症が起こりやすくなる

    バリア機能の低下によって乾燥と外部刺激の影響が強まり、再び炎症が起こることでSTEP01へ戻ります。

炎症へ戻り、バリア機能低下の悪循環が続く

2つの悪循環が同時に進むことで、乾燥と炎症が互いを進める「乾燥スパイラル」へつながります。

Frequently
Asked Questions.

よくある質問

PCAとウロカニン酸はどちらも保湿成分ですか?

どちらもフィラグリン由来のNMF関連成分ですが、主な役割は異なります。PCAは水分保持に、ウロカニン酸は紫外線防御や肌表面を弱酸性に保つ働きに関わります。

肌表面のpHが上がると何が起こりますか?

弱酸性環境が保たれにくくなり、皮膚の常在菌バランスが乱れやすくなります。黄色ブドウ球菌が増殖しやすい環境へ傾く可能性もあります。

CEとは何ですか?

CEはCornified Envelopeの略で、日本語では角化細胞膜と呼ばれます。角質細胞を支える外壁のような構造で、細胞間脂質が整列する土台になります。

未熟な角質層ではなぜ乾燥しやすくなるのですか?

CEや細胞間脂質が十分に形成・整列しにくくなるためです。バリア機能が低下し、水分が蒸発しやすく、外部刺激も入りやすい状態になります。

Break
the Cycle.

乾燥スパイラルを断ち切るために。

次章では、「水分を逃がさない油分補給」「炎症を繰り返さないためのケア」「活性酸素対策」の3つの視点から、乾燥しにくい肌を目指すための具体的な方法を解説します。

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